最低賃金が上がるので、当社でも賃上げを検討しています。
賃上げをするときにもらえる助成金がある聞いたのですが、うちの会社も対象になりますか?
賃金の引き上げと同時に生産性を高めるための設備投資をした場合に、その設備投資費用の一部が支給される助成金があります。
この記事では、受給できる要件、支給額、申請方法、といった疑問にお答えするほか、気を付けたいポイントをお話しします。
こんにちは、埼玉県で社会保険労務士をしております高杉(たかすぎ)です。
中小企業の人手不足解消には、助成金を活用した労働環境改善やクラウド導入が有効です。
このブログでは、「中小企業の持続的な成長を支援する」をテーマにさまざまな情報をお届けします。
助成金の対象となる事業者は
支給対象となるは、次のいずれにも該当する事業者です。
1.下の表の①資本金額か②従業員数のいずれかに該当すれば、対象になります。
個人事業者は②に該当すれば、対象になります。
業種 | ①資本金または出資の額 | ②常時使用する従業員数 |
小売業、飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種(※) | 3億円以下 | 300人以下 |
2.「最も低い従業員の時給」と「その地域の最低賃金」との差額が50円以内であること
複数の店舗や営業所がある場合は、それぞれの店舗、営業所ごとに判断します。
助成の対象となる取組
この助成金は、賃金の引き上げに向けて設備投資をした場合に、その費用の一部を助成するものです。
賃金の引き上げをするには、設備やシステムを導入して労働生産性を上げる必要がありますよね。
そういった費用の一部を国が助成しますので、賃上げや設備投資を積極的に進めてくださいね。という考え方です。
ただし、「賃上げ」と「設備投資」のそれぞれの取組には要件がありますので注意してください。
賃金の引上げの要件
助成金の対象となるには次の要件を満たす必要があります。
- 最も低い時間当たりの賃金額(以下、事業場内最低賃金といいます)を30円以上引き上げる。
- 引き上げた後の「事業場内最低賃金」を今後の下限の賃金額とする規定を就業規則等に定める。
設備やシステム導入の要件
助成金の対象となる経費は、生産性の向上や労働効率のアップにつながる設備投資にかかる経費です。
対象となる経費の種類です。
生産性向上などにつながる設備投資等の経費 |
謝金、旅費、借損料、会議費、雑役務費、印刷製本費、原材料費、機械装置等購入 費、造作費、人材育成・教育訓練費、経営コンサルティング経費、委託費 |
具体な例は次の通りです。
- POS レジシステム導入による在庫管理の短縮
- 自動釣銭機を導入し顧客対応時間の短縮
- 厨房のレイアウト変更による作業導線の改善
- フォークリフトの導入による荷物運搬作業の効率化
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 受発注付きホームページによる受発注作業の効率化
- 勤怠計算、給与計算システムの導入による業務の効率化
- 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
- 国家資格者による経営コンサルティング(顧客回転率の向上を目的とした業務フロー見直し)
助成額は
助成額は次のように計算されます。
対象経費の合計額 × 補助率(3/4) = 助成額(上限あり)
助成額の上限は、次のように定められています。
利用の流れ
助成金を受給するには、利用の流れを守ることが大切です。
順番を間違えると、1円も受給できなくなりますので、気をつけてください。
おおまかな流れを次にようになります。
次の5点に注意が必要です。
- 助成金の支給は支給申請したあとに振り込まれます。
したがって、設備購入代金は一旦全額自己資金で支払うことに注意してください。 - 期限について
・令和6年12月27日までに交付申請書・事業実施計画書等を都道府県労働局に提出し、
・交付決定の通知を受けたのち、令和7年1月31日までに賃上げと設備の購入、支払いを完了してください。 - 賃金引上げの取組は、交付申請書を提出したあとに行ってください。
- 設備投資の取組は、交付の決定を受けたあとに行ってください。
交付決定の前に、設備の支払はもちろん、発注・契約などを行った場合も、その経費は助成対象になりません。 - 設備代の支払いは、
・銀行振り込みで支払うこと
・助成対象の取組の費用以外のものと合算しないこと
に注意してください。
まとめ
最低賃金は毎年約5%のペースで上昇しており、企業にとって賃上げは避けて通れない課題です。
賃上げに伴うコスト負担を軽減するためには助成金の活用が効果的です。
今回の記事では、助成金をまだ利用したことがない方にも理解しやすいように細かい点は省きわかりやすく説明しました。
実際の申請にはいくつかの細かい手続きが必要ですが、それらを含めて社会保険労務士に相談することで、スムーズに進められます。
助成金の活用をお考えの方は、ぜひ専門家にご相談ください。